早稲田大学三国志研究会新歓レジュメ
〜 曹操の評価 〜
早稲田大学法学部3年 じろうくん
三国志のもう一人の主役「曹操」の評価について考えてみたいと思います。演義やゲームなどで誇大される“奸雄”としての評価は蜀漢への判官びいきがもとになっているのでしょうが、三国のうち、最大の版図を持った魏の礎を築いた、歴史的必然としての曹操の側面=戦略的施策も見ていきたいと思います。
● Value of “曹操”
1、 政権の都合が決める評価
○ 西晋・・・魏の禅譲をうけたため、魏を正統とみなしています。
〜 陳寿 「三国志」・・・“非常の人、超世の傑”
○ 東晋・・・華北(中原)を非漢民族に奪われてしまい、華南に追われたため、
蜀と似た境遇にあり、蜀漢を正統としたほうが、都合がよかったのでしょうか。
〜 習鑿歯 「漢晋春秋」
曹操=簒奪者
孔明=軍事的天才と称揚
※ 一方、先述の陳寿は孔明の軍事的能力を疑問視。
○ 北宋 〜 司馬光 「資治通鑑」
天下統一をしていないので正統とはしないが、事実上はそうとらえ、曹操にも肯定的。
〜 蘇軾 「赤壁の賦」
英雄としての曹操。
○ 南宋・・・華北を奪った金を魏に、みずからを蜀漢に比定する。
〜 朱熹(朱子学の創始者)「資治通鑑綱目」=蜀漢正統論
2、 曹操のマイナス評価の噂
・ 陶謙討伐時の“鶏犬も余さず”の虐殺。
・ 伏皇后殺害のような、陰険・狡猾さ
→ 平話などで固定化され、演義につながる。
3、 近現代の見地
“中華人民共和国”
〜農民反乱=“起義”として評価せざるを得ない。
→ 黄巾の乱を討った曹操はどうなるのか?
○ プラス評価としては?
黄巾の乱の目的(糧食や土地をもとめての起義)とすれば・・・
→ 曹操は、黄巾賊を青州軍として組織化して、屯田民としたわけであるから、
糧食と土地の問題を解決した点、評価できよう。
● 曹操の施策
○ 屯田兵制
定義=中国で国有地に農民を導入して耕作させる制度
耕作者が兵=軍屯、一般民=民屯
〜 曹操の行った屯田制 〜
財源確保のため、各地に民屯をおいて、“典農官”(郡県官と別)に管理させる。
※ 税率:官牛を用いる者 6割、私牛を用いる者 5割
※ 蜀・呉との国境には、軍屯を配置。(淮河流域は特に大規模)
※“典農官”=典農中郎将、典農校尉
※ 農民は、征服民の強制移住による。
※ 税収形態
漢=人頭税・徭役(個別人身的支配)→ 銭納
曹操= 戸調の制 (戸単位で絹・綿など)→現物納
○ 兵戸制
兵士を編戸の民(一般民)と離して、別の戸籍。(兵農分離の黎明)
〜 “父死して子代わり、兄死して弟代わる。”=永代の兵役義務
○ 人材登用のテーゼ=実力主義
“行いにかかわらず、才能あるものを用いよ。(不仁不孝でも)
↓
後漢=儒教一尊(仁・孝)
○ 清流派の取り込み
荀ケ、荀攸、陳羣、華?など
しかし、清流派としてのあり方 VS 曹操の帝位への野望
→ 荀ケの葛藤、自殺。